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千葉地方裁判所 平成7年(わ)1248号 判決 1996年3月05日

主文

被告人を懲役三年六月及び罰金五〇万円に処する。

未決勾留日数中一四〇日を右懲役刑に算入する。

右の罰金を完納することができないときは、金五〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

押収してある大麻草一〇袋(平成七年押第三〇四号の一ないし一〇)を没収する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、分離前相被告人A及びフィリピン人のBらと共謀の上、みだりに、営利の目的で、大麻を輸入しようと企て、大麻である大麻草(種子を含む)五〇四二・九八グラム(平成七年押第三〇四号の一ないし一〇はその鑑定残量)を、仏像四体を収納した梱包用木箱合板内に隠匿し、これを、平成七年七月一九日(現地時間)、フィリピン共和国マニラ市内から東京都墨田区《番地略》所在の居酒屋「甲野」宛に航空貨物として発送し、同月二〇日(現地時間)、同国ニノイ・アキノ国際空港において、キャセイ・パシフィック航空第九〇二便に搭載させて同空港を出発させ、同日(現地時間)、経由地である香港啓徳国際空港に到着させて、千葉県成田市所在の新東京国際空港までの貨物として同航空第六便に積み替えさせて、同月二一日(現地時間)、右啓徳国際空港を出発させ、同月二一日午後一時二七分ころ、千葉県成田市駒井野字天並野二一三九番地五所在の新東京国際空港第二〇九番駐機場に到着させ、情を知らない航空関係作業員をして、右大麻草を隠匿した右航空貨物を同航空機から機外に搬出させて本邦内に持ち込み、もって大麻を輸入するとともに、同日、情を知らない航空関係作業員をして、同市駒井野字天並野二一二一番地所在の国際空港上屋株式会社成田保税蔵置場に搬入させ、同日、情を知らない通関業者をして東京税関成田税関支署長に対し、仏像としてのみ輸入申告させて、同月二七日、通関し、もって、関税定率法上の輸入禁制品に当たる貨物である大麻を輸入した。

(証拠)《略》

(補足説明)

一  1 被告人は、本件大麻の輸入(大麻輸入罪及び関税法違反罪の事実)について、公判において、一切否認し、弁護人も、分離前相被告人Aとの間に、本件大麻の輸入についての事前の共謀はなく、右Aが一人でフィリピンに渡航し、勝手に被告人の住所宛に本件大麻を送り付けたものであって、被告人は、送った後にAからその旨連絡され、やむを得ず受け取ったものに過ぎないから、大麻輸入罪及び関税法違反罪につき無罪であると主張する。

2 そこで、本件大麻が我が国に輸入されるに至った経緯を検討するに、前掲関係証拠によれば、以下の事実が認められる。なお、以下の認定に反する被告人の公判及び捜査段階での供述はいずれも措信できない。

(1)(被告人とAとの関係)

被告人は、平成二年にAが経営する会社から三〇〇万円を借り受けたことから、当時暴力団員であったAと知り合い、その後これといった収入の途がなかったため、Aの経営する会社で雑用をして週二万円程度の小遣いを得るなどしており、また、Aが経営する会社は二つあったが、名目上ではあるが、そのうちの一つの取締役になったりしていたこと、Aは、監禁及び傷害事件で平成三年八月下旬から逮捕勾留され、有罪判決を受けて平成七年三月末まで服役したが、この間、被告人は、Aから会社をよろしく頼むなどといわれたりしていたこと、被告人は、同年三月から知人と居酒屋を共同経営するに至ったが、客も少なくて収入が乏しく、同年五月中旬ころ、刑務所を出所していたAと会った際、前記借金につき利息を合わせて五〇〇万円の借用証を書くよう求められてこれに応じるとともに、以後Aと一緒に金になる仕事はないかとポケットベル及び電話で頻繁に連絡を取り合ったうえ、落ち合って不動産の仲介物件を見に行ったりしていたこと(被告人の公判供述及び捜査段階での供述〔乙三ないし五、八、一〇〕、Aの公判供述、森本勇の大蔵事務官調書〔甲六〕など)

(2)(大麻輸入の共謀の成立)

Aは、服役中フィリピン人のBと知り合い、同人と、フィリピンから商品を輸入したり日本から中古車のエンジンを輸出する話などをしたことがあり、出所後同人に帰国旅費を差し入れてやったりしていたものであるが、思うように不動産仲介等の仕事が進まなかったことから、Bが大麻の話をしていたことを思い出し、同人の手ずるで大麻を密輸入して一儲けし、それで資金を作ってフィリピンから商品を輸入する等の仕事をしたいと考え、平成七年六月中旬、被告人に対し、「フィリピンに友達がいる。フィリピンから大麻を輸入して売れば儲かる。フィリピンでは大麻はたやすく手に入る。」などと大麻を輸入する話を持ち掛け、これに対し被告人も、金が欲しかったこと、Aからは前記のとおり借金があり断りずらかったことから、Aの右申し出に賛同して一緒にフィリピンから大麻を密輸入してこれを売却しその利益を取得することにして、以後三回ほどにわたり二人で大麻を密輸入する方法などの相談をした結果、先にAがフィリピンに渡って大麻の買付けをし、その後被告人もフィリピンに行って現地でこれを受け取り、手荷物の中に隠匿して持ち帰ることに決め、二人共旅券の申請をするとともに航空機の切符を購入するなどして準備したこと、なお、六月中旬ころまでに、Aは被告人に、暴力団から足を洗った旨伝えてあり、そのころからAは子分を連れずに一人で被告人のところに来ていたこと(被告人の公判供述及び捜査段階での供述〔乙五、六、一〇、一一〕、Aの公判供述、C子の警察官調書〔甲四一〕、公文書入手報告書〔甲五七、五八〕、航空券予約状況調査報告書〔甲四〇〕など)

(3)(Aのフィリピン渡航と大麻の輸入方法の変更)

Aは、予定どおり平成七年七月一日フィリピンに渡航し、Bの紹介で同月二日か三日に大麻取引のブローカーと会ったこと、その際、Aは、ブローカーから、手荷物として持ち帰るのは危険であり、きちんと梱包するから航空貨物として送るほうが安全である、送り先は個人よりも店とか会社のほうがよいと言われ、急遽輸入方法を変更して航空貨物として送る方法を取ることにしようと考え、同月三日、日本にいる内妻のD子を介して、被告人にすぐにフィリピンのAに電話を入れてくれるよう伝えるとともに、被告人の居酒屋「甲野」の住所を聞いたこと、右連絡を受けた被告人が、同日若しくは翌日、Aに電話を掛けたところ、Aから「郵送にした方が安全だということだ。ブローカーがきっちり梱包して送ってくれる。甲野さんの店に送ることにしよう。」などと輸入方法を変更する旨の申し出を受け、これに対して、被告人は、貨物の場合は麻薬犬に見付かってしまうのではないかと心配してその旨Aに言ったが、同人が自信たっぷりに大丈夫だと言うので、大麻を右の居酒屋に送る方法を取ることを承諾し受け取りを約したこと(被告人の公判供述及び捜査段階での供述〔乙六ないし一一〕、Aの公判供述、D子の検察官調書〔甲三九〕、C子の警察官調書〔甲四一〕、公文書入手報告書〔甲四二〕、証拠品精査及び複写報告書〔甲四五〕など)

(4)(大麻の発送依頼と発送及び受領)

Aは、被告人との前記電話のやり取りの後、ブローカーと再度会って、手持ちの現金から滞在費等を差し引いて残る六万円を大麻購入費に当てることとして同金額分の大麻(ブローカーの話では二八〇〇から三〇〇〇グラムということであった)の購入及び発送を依頼して、その金を支払い、送り先は前記被告人の居酒屋「甲野」宛とすることを申し向けたこと、しかして、Aがフィリピンにいるうちにはブローカーの大麻の準備が間に合わなかったため、Aは輸入する大麻を確かめることができずに、七月一二日に帰国し、翌日、被告人に、これらのことを電話で伝えたこと、同月一九日にBからAに約束どおり大麻を送った旨、また、遅れて済まなかったが、約束よりサービスして五〇〇〇グラム入れた旨の電話があったこと、そこで、Aはこのことも被告人に電話で伝えたこと、同月二七日、大麻入りの航空貨物が被告人の居酒屋「甲野」に配達され、Aとの前記約束に基づき被告人が受領したこと(被告人の公判供述及び捜査段階での供述〔乙六ないし一一〕、Aの公判供述、貨物到着状況調査報告書〔甲三六〕、コントロールド・デリバリー実施経過報告書〔甲四〕など)

(五)(七月三日ないし四日の電話における承諾)

なお、弁護人は、七月三日ないし四日の被告人とAとの電話で、被告人は大麻を居酒屋「甲野」に送ることを承諾していないのであって、これを認めるAの公判供述及び被告人の捜査段階での供述(乙八、一一)は信用できないと主張するが、被告人の公判供述によっても、店(居酒屋「甲野」)に送ることを断ってはいないというのであり、被告人が右の電話で承諾の趣旨の応答をしたことは、前記認定のとおり明らかといえる。被告人がそのときの心情として、「すでに六月の時点で大麻をフィリピンから持ち込んで来ることをAと相談して決めていたし、Aには借金があって断りにくかったことと、自分も相当の分け前を貰えると思っていたことから了承したのです。」(乙一一、八)と述べるところも、前記認定の本件の経緯に照らして、自然であって、十分な信用性があるといえる。また、被告人は、もし、本件が発覚しなければ、本件大麻をAに渡して予定通り大麻を売りさばいていたと思うと再三供述しているところでもある(乙八、九、一一)。

3 以上の事実関係によれば、本件では、すでに被告人とAとでフィリピンから我が国内に大麻を輸入しこれを売りさばいて利益を上げようとの共謀が、Aがフィリピンに渡航した七月一日以前の段階で成立しているのであり、その後右共謀の内容のうち、フィリピンから携帯して持ち込むとの点が航空貨物で持ち込む方法に変更されただけであり、しかも、Aは、被告人にその旨連絡した上で同方法を取っているのである。そうすると、右輸入方法の変更について、被告人が明確に反対し共謀関係から離脱する意思表示をしない限り、被告人は、本件共同正犯の責任を免れないといえるが、さらに、本件では、前記のとおり、被告人において右輸入方法の変更を承諾していたと認められるのであるから、被告人に本件大麻輸入罪及び関税法違反罪の共謀共同正犯が成立することは明白である。

二  弁護人は、大麻取締法違反の事実につき、被告人には営利の目的がなかったと主張し、被告人も、公判で、営利の目的がなかったかのような供述もするが、前記のとおり、本件が、Aと被告人が売りさばいて利益を得ようともくろんで敢行した大麻の輸入事犯であることが明らかであるところ、被告人においても儲けの相当分を取得できると考えていたことは被告人自身捜査段階において供述するところであり(乙九、一一)、さらに、公判においても、転売利益をもってAに対する借金返済に当てるつもりであったとの供述もしているのであり、これらの供述は十分な合理性があって信用できるから、被告人についても、営利目的の存在は優に認められる。

三  弁護人は、本件大麻には、規制の対象から除外されている大麻草の成熟した茎及び大麻草の種子が含まれており、大麻取締法によって所持及び輸入が禁止される大麻の量が立証できていないから、大麻取締法違反及び関税法違反の犯罪の証明がないといわざるを得ないと主張するが、押収してある大麻草一〇袋(平成七年押第三〇四号の一ないし一〇)及び鑑定書一〇通(甲二二ないし三一)によれば、本件大麻には規制対象外の物としては大麻草の種子を含むのみであり、規制の対象から除外されている大麻草の成熟した茎を含まないものであることが明らかである。また、前記認定判示に係る本件大麻草の重量は右の種子を含むものであるところ、できるだけ大麻草のみの正確な量の立証が望ましいことはいうまでもないが、犯罪事実に数量を認定判示する理由は、必要最小限のところでは犯行の同一性を特定するためであるから、種子を除外して計量することが困難な本件のような場合には、これを含んだ重量として立証し認定判示しても、犯罪事実の認定として欠けるところがないことはもちろんであって、この点の弁護人の主張も理由がない。

四  弁護人は、本件大麻輸入罪及び関税法違反罪は、いずれも未遂であると主張するが、まず、大麻輸入罪についていえば、航空機で税関空港に着陸して輸入する場合は、航空機から取り降ろした時点で我が国内における保健衛生上の危害発生の危険が現実に生ずるのであるから、この段階で既遂と解するべきであり、これは既に確立した判例となっている(参照、最高裁第一小法廷判決昭和五八年九月二九日、刑集三七巻七号一一一〇頁。最高裁第一小法廷決定昭和五八年一二月二一日、刑集三七巻一〇号一八七八頁)。また、関税法違反罪については、保税地域を経由して引き取る場合は、当該輸入禁制品たる貨物が関税線を突破すれば既遂と解すべきことも確立した判例といえる(右最高裁判決及び決定参照)。

もっとも、弁護人は、コントロールド・デリバリーの特殊性から、すなわち、税関検査の段階で、既に税関当局及び警察には関税法違反の規制薬物輸入の事実(この段階では未遂)が発覚しており、後は捜査の都合によって、当該規制薬物を捜査官の厳重な管理の下保税地域外に出すに過ぎないのであるから、既に当該規制薬物は犯人の支配下にはないのであり、形式的には保税地域外に出たといっても、これを既遂と評価することはできない旨主張するので、この点検討する。

コントロールド・デリバリーにおいては、当該規制薬物を保税地域外に出すのは、捜査上これを必要とする場合であって、しかも当該規制薬物の散逸を防止するための十分な監視体制が確保されていることを要することは、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律四条の規定からしても明白である。したがって、殆どの場合、当該規制薬物が保税地域を出て犯人の手に渡ったとしても、犯人において輸入の目的を達することがないまま当該規制薬物の押収を受けるに帰するであろうとはいえる。しかし、当該規制薬物は、あくまでも犯人の意図したところに従って保税地域を出て犯人の元に行っているのであり、捜査官は単にこれを監視しているに過ぎないのである。実際問題として、右のとおり、十分な監視体制の下に関税線を通過させ犯人の手に渡したとしても、場合によってはこれが散逸し、犯人によって処分されたり使用されたりすることもないとはいえない。また、捜査官が犯罪がなされていることを認知しており、未遂の段階で止め得たのにこれをしなかった場合には、犯人に既遂の責任を問い得ないというものでもない。よって、当該規制薬物がコントロールド・デリバリーによって保税地域外に出たとしても、これを関税法上の禁制品輸入罪の既遂に問うべきは明らかである(なお、弁護人は、大麻取締法上の大麻輸入罪についても、コントロールド・デリバリーの場合における未遂の主張をするが、大麻取締法上の大麻輸入罪はコントロールド・デリバリーを実施する以前に既遂となっているのであるから、この点において既に失当な主張である。)。

五  なお、本件の公訴事実は、平成七年八月一七日付け大麻取締法違反並びに同月二九日付け大麻取締法違反及び関税法違反の各事実であり、検察官は一七日付けに係る罪と二九日付けに係る罪とは併合罪であると主張する。

そこで、検討するに、一七日付け大麻取締法違反の公訴事実(訴因変更後のもの)は、「被告人は、Aと共謀の上、みだりに、営利の目的で、平成七年七月二七日、東京都墨田区《番地略》居酒屋「甲野」店内において、大麻である大麻草五〇四二・九八グラムを所持したものである。」というのであり、前掲関係証拠によれば、右公訴事実は優にこれを認めることができるが、右の大麻所持とは、犯罪事実として認定判示した、被告人及びAらが共謀の上、フィリピンから東京都墨田区《番地略》所在の居酒屋「甲野」宛に大麻草入りの木箱一個を航空貨物として発送する方法によって輸入された大麻を、被告人が、国際宅配貨物の取り扱い業者によって、送り先である居酒屋「甲野」に配達され、同所で受領して所持したものである。すなわち、所持した場所は、右の業者から受領した場所そのままであって、店内のどこかに隠匿する等の所持態様に至っているものでなく、また、被告人が右貨物を受領したのが平成七年七月二七日午後三時五六分から同五八分の間であり、同日午後四時五分には捜査員が臨場し捜索に着手して右貨物についての捜索が開始され、同日午後四時二八分には右貨物内の大麻所持の事実で被告人は現行犯逮捕されるに至っているもので、実質的に所持した時間は七分から九分程度の間である。もちろん、被告人は右貨物を開けて中から大麻を取り出すなどのこともしていない。

しかして、大麻の所持が大麻の輸入に必然的に伴うものに過ぎないと見得る場合は、大麻所持罪が大麻輸入罪と別個に成立するものではないというべきところ、本件のように国際宅配貨物の方法によってなされる輸入行為は、外国において我が国内のいずれかの場所に宛て発送し、これが国際宅配業者等によって荷受け人に配達されることによってなされるものであるから、荷受け人が受領するまでが輸入行為と見ることができるのであり、したがって、荷受け人において宅配貨物を受領した段階における所持は、輸入行為に必然的に伴うものと見ざるを得ない。もちろん、大麻輸入罪は、当該大麻が我が国内に持ち込まれること自体を防止することをその目的とするものであり、新東京国際空港に到着して航空機から取り降ろされた時点で既遂となっているものであるが、犯罪の既遂時期は犯罪類型としての輸入行為の完了時期と必ずしも一致するとは限らないのであり、既遂後の所持であるから当然に独立して所持罪を構成すると考えなければならないわけではない。

そうすると、右に見たとおり、前記起訴に係る大麻所持は、本件大麻入りの宅配貨物の受領に伴う所持の範囲を出てはおらず、本件大麻輸入に必然的に伴う所持と認められるのであり、本件大麻輸入罪とは別個に大麻所持罪が成立するものではないというべきである。この限りにおいて、弁護人の同旨の主張は理由がある。なお、この場合、公訴棄却の言渡しや訴因変更の手続を要しないというべきである(参照、最高裁第三小法廷決定昭和三五年一一月一五日、刑集一四巻一三号一六七七頁)。

(法令の適用)

1  罰条

大麻を営利目的で輸入した点につき、刑法六〇条、大麻取締法二四条二項、一項

輸入禁制品に当たる貨物である大麻を輸入した点につき、刑法六〇条、関税法一〇九条一項、関税定率法二一条一項一号

2  科刑上一罪の処理

刑法五四条一項前段、一〇条(一罪として重い大麻取締法違反罪の刑で処断)

3  刑種の選択

情状により懲役刑及び罰金刑の併科

4  未決勾留日数の算入

刑法二一条(懲役刑に算入)

5  労役場留置

刑法一八条

6  没収

大麻取締法二四条の五第一項本文、関税法一一八条一項本文

(量刑上特に考慮した事情)

一  不利な事情

1  被告人らが輸入した大麻草は、五キログラム余(種子を含む)と大量であり、被告人らの計画どおりこれが我が国内で売りさばかれて拡散した場合の害悪は多大である。

2  仏像を梱包した航空貨物の木箱の合板内に隠匿して輸入するなど巧妙悪質な方法である。

3  本件大麻草を処分して利益を上げようとしての犯行である。これらによれば、被告人の刑事責任は重い。

二  有利な事情

1  幸いなことに税関検査で大麻草の隠匿が発覚したため、これらが我が国内で拡散することがなかった。

2  本件は、共犯者のAから誘われて加担した犯行であり、終始Aが主導的であった。

3  本件犯行を悔悟している。

4  被告人には、業務上過失傷害罪及び道路交通法違反罪による各罰金刑以外には前科がない。

5  被告人には、居酒屋の経営という定職がある。

6  老母が被告人の帰りを待っており、また、姉が被告人の監督を誓っている。

右のような斟酌すべき事情もある。

三  そこで、これらの諸事情を総合考慮し、被告人を主文掲記の刑に処するのが相当であると判断した。

(検察官 高田佳子、弁護人 向井惣太郎各出席)

(求刑 懲役五年及び罰金一〇〇万円、大麻草の没収)

(裁判官 竹花俊徳)

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